研究概要 |
昭和62年度は全力運動時における運動時間の長短に伴う無酸素性および有酸素性のエネルギー供給量の推移および休息時間の長さが間欠的全力運動時における出力パワー, 無酸素性および有酸素性のエネルギー供給量に及ぼす影響について重点的に検討した. 実験内容は, まず運動時間の長短が及ぼす影響については, 7種類の運動時間(5, 15, 30, 45, 60, 90, 120秒)を設定し, それぞれの時間で自転車エルゴメーターの全力ペダリングを行った. 休息時間の影響については, 作業内容が10秒間の全力ペダリングを10試行繰り返すというものであり, 各試行間の休息時間を, 10, 30, 50秒の3種類に設定した. 各作業中の機械的パワーおよび有酸素性エネルギー供給量の指標として酸素摂取量を, 無酸素性エネルギー供給量の指標として酸素負債量と血中乳酸をそれぞれ測定した. その結果, 運動時間の長さを変えた場合に, 乳酸値は運動時間が長くなるにつれ曲線的に増加するが60秒以上になるとほぼ一定値を示した. 単位時間当りの乳酸の発生量は, 0〜5秒および5〜15秒の2つの時間帯で最も大きく, それ以後は経時的に急速に低下し, 60秒以後ではほとんど発生がみられなくなった. このことより最大努力作業の場合, 乳酸性機構によるエネルギー供給は作業初期の15秒間が最も大きく, その後時間経過に伴い急速に減少し60秒以後ほぼ終了することが示唆される. また休息時間を変えて間欠的に全力運動を行った場合に, 休息時間に関係なく運動時間が一定であると酸素摂取量はほぼ同レベルであるが, 酸素負債量は休息時間が長くなるにつれ大きくなる傾向が認められた. このことは休息時間が長くなるにつれ無酸素性のエネルギー出力の占める比率が高くなることを示すものと考えられる.
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