昭和62年度の作業時間および休息時間の長短が、運動中の筋出力及びエネルギー代謝の動員様式における変化に関する研究結果に基づき、昭和63年度では、反復的全力運動時の筋出力増大の為のトレーニングを処方しその効果について検討した。トレーニング内容は、自転車エルゴメーターを用い、10秒間の全力ペダリングを20秒間の休息をはさみ10セット反復するというものであった。トレーニング頻度は週3日であり、2ケ月間にわたり実施した。被検者は男子体育大生であった。 その結果、トレーニングにより各セット毎の出力パワー及び総仕事量は有意に増加した。エネルギー代謝の指標として測定した最大酸素摂取量、反復的全力運動実施中の酸素摂取量(作業期、休息期、回復期)は、作業期の酸素摂取量をのぞきいずれも有意に増加した。 昭和61年度から63年度までの一連の研究結果より、(1)反復的全力運動においては作業期と休息期の時間配分によりエネルギー供給系の動員様式が異なり、作業期に対し休息期の時間が相対的に長くなるにつれ無酸素性機構のエネルギー出力への依存度が高まり、逆に短くなると有酸素性機構の貢献度が増す、(2)反復的全力運動における筋出力増大の為のトレーニングを処方するにあたっては、作業形態として同じく反復的全力運動を用いた場合に、作業期と休息期の時間配分によりトレーニング後の筋出力は特異的に変化すると考えられる、(3)作業そのものは1回の試行としてみれば無酸素性のエネルギー供給系の動員によるものであっても、それを間欠的に反復し、且つ作業期と休息期の時間配分を考慮することにより、非乳酸性機構から有酸素性機構までの広範囲にわたるエネルギー供給系の強化が可能である、と結論した。
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