本研究では、反復的全力運動における筋出力増大の為のトレーニング処方開発を目的として2種の実験を企画し実施した。実験Iでは反復的全力運動時の筋出力及びエネルギー供給系の動員様式における変化を検討する為に、 (A)10秒間の全力ペダリング作業を休息時間の長さを変えて、 (B)休息時間を20秒間として作業時間を変えて、それぞれ実施し、各作業条件での出力パワー、仕事量、酸素摂取量(作業期、休息期、回復期)、及び血中乳酸濃度を測定した。実験IIでは、実験Iの結果に基づき、作業時間10秒-休息時間20秒×10セット、という運動条件による自転車エルゴメーターでの全ペダリング・トレーニングを週3日の頻度で2ケ月間にわたり実施した。被検者は実験I及びIIとも男子体育大生であった。 その結果、 (1)反復的全力運動においては、作業期と休息期の時間配分によって、エネルギー供給系の動員様式が異なり、作業期に対し休息期が相対的に長くなるにつれ、無酸素性機構のエネルギー出力への依存度が高まり、逆に短くなると有酸素性機構の貢献度が増す、 (2)反復的全力運動における筋出力増大の為のトレーニングを処方するにあたっては、作業形態として同じく反復的全力運動を用いた場合に、作業期と休息期の時間配分によりトレーニング後の筋出力は特異的に変化すると考えられる、 (3)作業そのものは1回の試行としてみれば無酸素性のエネルギー供給系の動員によるものであっても、それを間欠的に反復し、且つ作業期と休息期の時間配分を考慮することにより、非乳酸性機構から有酸素性機構までの広範囲にわたるエネルギー供給系の強化が可能である、という以上3点が主に明らかになった。
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