各時代における社会的事象を背景にして、それぞれの健康観・身体観に特色が見られた。特に近代に至り諸文化が西欧諸国より導入されるにともない医学もまた古来より中国大陸の影響を強く受けて浸透し発展してきた漢方医学による個人中心の健康観即ち「養生思想」から西欧医学による公衆の中での個人健康を考える「衛生思想」へと変革移行されてきた。これらの歴史的流れを体育史をふまえながら医史学との接点を求めるべく考察した。 研究方法としては全国医・歯科系大学・研究所及び主要国・公立図書館に対し「アンケート」を依頼し、明治時代までの医学古書、資料等について調査整理し複写可能なものについては一部複写製本した。調査整理した結果、当然のことながら伝統のある規模の大きい図書館ほど「貴重本」が多く所蔵され「○○文庫」として大切に特別保存され利用されていた。今後年月がたつごとに破損散失するおそれがあり、先達の残した貴重な著書、資料は更に指定し永久保存されることが望まれる。 本研究中、各時代特筆すべき問題に関していくつかの知見を得た。特に漢方医学的養生思想から西欧医学的衛生思想に移行した明治初期の研究に関して発表したものを冊子として別途提出する。 今後は更にわが国文化の発展に関係した諸外国の文献・資料をも探索して科学史との関連も求めて行きたい。
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