研究概要 |
生後2,3ヵ月頃までみられる原始歩行と生後5,6ヵ月頃からの支持歩行,1才前後の独立歩行,その後習熟していく過程の歩行を継続して筋電図記録し、筋の作用機序の面から検討を加えた。 生後1ヵ月までの新生児,生後2,3ヵ月の乳児の原始歩行は接床期,下肢筋群に強い同時放電がみられ、成人とは異なった。これは脚の半屈曲位を維持するためと考えられる。離床時は股関節屈筋の大腿直筋と足背屈筋の前脛骨筋に強い放電がみられ、独立歩行前の支持歩行,独立歩行,幼小児,成人歩行のパターンと基本的に一致していた。離床期後半の脚伸展動作は離床期前半の積極的な脚の屈曲動作に比し、ゆっくりなされ、脚伸展筋には殆んど放電はみられなかった。しかし強い脚伸展動作がなされたときには脚伸展筋に強い放電が認められた。着床は四足動物と同様つま先着地が多いが、足底屈筋の腓腹筋には着床前に放電はみられなかった。足背屈筋の前脛骨筋にも放電はみられず幼児型の歩行パターンに類似していた。着床前、前脛骨筋に放電のみられる成人パターンがごく一部認められた。 生後3ヵ月頃から着床前脚伸展筋と共に腓腹筋に強い放電がみられはじめた。これは不安定な独立歩行開始期に同様の放電が多くみられた。しかし支持すると消失することから着床前の腓腹筋の放電は不安定さを示していることがわかる。このことから生後3ヵ月頃からみられる着床前の腓腹筋の放電様相から不安定さを感じはじめたものと推測される。 原始歩行の動作,筋電図結果から出生時,動物様の四足歩行パターン,成人の二足歩行様の両パターンを保有しているものと推定される。また原始歩行で用いられている歩行発生器(Locomotor generator)は独立歩行前の支持歩行,独立歩行,乳幼児歩行,成人歩行に引きつづき用いられているものと思われる。
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