研究概要 |
培養ニワトリ胚繊維茅細胞から得られた細胞性フィブロネクチン(cFN)標品の特異性質である赤血球凝集活性がニワトリ胚肢茅末分化間充織の軟骨への分化に必須な過程:間充織凝集反応をになう活性と同一であるとの仮説のもとに、その分子実体の解析を進めた。cFN標品をゲルろ過した所、赤血球凝集活性はフィブロネクチンより高分子側に溶出された。この画分を赤血球との結合性を利用した固定化赤血球アフィニティーカラムにかけ活性分子の単離に成功した。この分子は還元前はゲル中に泳動されない高分子だが、還元により220,000,200,000,190,000の分子量をもつ3つの成分になる。この分子は、市販のcFN標品中の蛋白質の約30%をも説明する。この分子に対する抗体を作製した。抗体はフィブロネクチンとは反応せず、またcFN標品の赤血球凝集活性を完全に抑えた。従って、従来cFNが特異にもっとされた赤血球凝集活性は、実はこの分子の存在によることが明らかになった。しかし、この分子をニワトリ胚未分化間充織細胞の培養系に加えたところ、凝集反応は期待した程に強く誘起されていなかった。再度の検討の結果、フィブロネクチンより低分子性のものに強い誘起活性がみつかった。現在、この分子のレクチンとの反応性を利用して単離を試みている。。一方、単離に成功した赤血球凝集活性分子は、86年にスイスのchiguetらが報告したテナシンと同一の分子らしい。彼等から抗体を得てこの分子との反応性を検討した結果、判明した。さらにこの分子が未分化間充織の細胞外マトリックスの主成分であるM型プロテオグリカンおよびフィブロネクチンと特異的に結合することもわかった。現在、分子中の細胞との結合にあづかるドメインやM型プロテオグリカンとフィブロネクチンとの結合にあづかるドメインを分解酵素による蛋白断片化の手法を用いて検索中である。
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