研究概要 |
細胞の接着,移動,分化などの様々な細胞生物学的活性を有するプロテオグリカンは、その生合成の最終段階において、硫酸化を受け成熟した機能分子となる。申請者は、この硫酸化を触媒する硫酸基転移酵素の1つであるコンドロイチン6-硫酸基転移酵素の活性をウシ血清中に見い出し、その活性がウシ胎仔血清中で高いことを見い出した。今回、その生物学的意義を明確にする目的で研究を行い、次の諸点を明らかにすることが出来た。 1.コンドロイチン6-硫酸基転移酵素以外にも、ケラタン硫酸硫酸基転移酵素,ヘパラン硫酸硫酸基転移酵素についても活性測定法を確立し、ウシ,ラット,鶏の個体発生と加齢に伴う、血清中のこれらの酵素の活性変動を調べた結果、どの動物種にも活性が検出され、各酵素活性は、各動物種において、それぞれ、特有の変動パターンを示すことが判明した。 また、酵素反応生成物の同定と基質特異性の研究を行った結果、これらの酵素は動物種に依らず、コンドロイチン(N-アセチルガラクトサミン)6-0-硫酸基転移酵素,ケラタン硫酸(ガラクトース)6-0-硫酸基転移酵素,ヘパラン硫酸(グルコサミン)2-N-硫酸基転移酵素であることが判明した。 2.ウシ血漿でも、血清と変わらぬレベルの活性が検出され、少くともコンドロイチン6-硫酸基転移酵素は、血小板由来ではないと考えられる。一方、軟骨肉腫をや骨肉腫を植えたラットやマウスを用いて、がん組織の成長に伴う血中酵素活性の変動を調べたが、どの酵素活性にも特に大きな変化は観察されなかった。また、ラットを用いて人工的に火傷を作り、皮フの炎症,治癒,再生の過程での血中酵素活性にも特に大きな変化は認められなかった。これらの結果は、血中酵素が成長に伴う軟骨細胞,骨細胞,皮フ線維芽細胞などの増殖に伴って分泌されるのではないことを示唆していると思われ、培養細胞を用いた方法を検討中である。
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