研究概要 |
若齢から老齢のC57/BLマウス(1,3,6,12,18,24ヶ月齢)を用いた大脳灰白質よりBooth,clarkの方法でシナプトゾーム分画を得た.ガングリオシドの抽出,単離はLedeenらの方法を改良して行ない、ガングリオシドパタンの分析には安藤らのTLCデンシトメトリーを用いた。シナプス膜の流動性は、ケイ光プローブとしてジフェニルヘキサトリエンを用いてケイ光偏光解消度から求めた.膜りん脂質の定量はBanrtlett法で、コレステロールは酵素法で行なった.アセチルコリン放出は、シナプトゾームに標識コリンを取り込ませ,高【K^+】、或はベラトリジンによる刺激で放出されたアセチルコリンを測定した. シナプトゾームのガングリオシド含量は若齢程高いが、成熟過程で減少し、12ヶ月齢以降の老齢期は一定値となっていた.ガングリオシドパタンの変化を見ると、シアル酸の多いポリシアロガングリオシドの割合が増加するが、これは加齢によるガングリオシド量の低下を補うものか,或はシナプスの増生を意味するものと考えられた.シナプス膜の流動性を見ると、若齢から12ヶ月齢にかけて低下し、丁度ガングリオシド含量の変化と対応しているように思われた.他の細胞膜で膜流動性調節の主要因子とされるコレステロール/リン脂質比は、シナプス膜では両者の相関は明確でなかった.シナプトゾームからのアセチルコリン放出をみたところ、やはり若齢から成熟期の間に低下がみられた.即ち,シナプスの加齢変化として、ガングリオシドの減少が膜流動性を低下させ、その結果シナプス小胞の膜融合によるトランスミッターの放出効率を下げることになると想像された.このことは老齢シナプトゾームへガングリオシド添加によって膜流動性の改善で確められた.アセチルコリンの真の放出量については電気化学検出器を用いる定量法を確立し、次年度応用する計画である
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