研究概要 |
まず、仔ウシ胸腺DNAリガーゼ【I】及び【II】に対する抗体を用いた免疫化学的手法によって、哺乳動物細胞に【I】と【II】の二種類の独立した分子種が存在することを解明した。【I】(分子量20万)が複製用,【II】(6.8万)が修復用といわれているが確証はなく、遺伝子レベルで二種類のDNAリガーゼの存在と発現機構を解明することが急務となっている。そこで、低分子量の【II】について、部分アミノ酸配列→合成プローブ→CDNAクローニング→CDNA塩基配列→ゲノムクローニングの順に研究を進めていく事を企図した。まず、仔ウシ胸腺より純化した【II】のN末端側からのアミノ酸配列の決定を試みたが、N端はブロックされていることが判明した。そこで、リシルエンドペプチダーゼあるいは臭化シアンを用いた方法でペプチドを切断後、気相シーケンサーで分析したが、【II】の量的な問題もあって信頼性のあるデーターは得られていない。現在、さらに改良を加え、部分アミノ酸配列の解明を行っている。適切な部分アミノ酸配列に基づいた合成プローブができれば、すでに準備している仔ウシ胸腺由来のcDNAタンパクより、DNAリガーゼ【II】に特異的なcDNAクローンが得られる手はずになっている。 【I】と【II】は免疫化学的に異なる事が明らかとなったが、【I】と【II】によるDNA鎖連結反応そのものに本質的な違いが存在する可能性がある。従来、【T_4】ポリヌクレオチドリガーゼ以外は、blunt-end連結反応を触媒できないといわれていたが、10-20%のPEG6000の存在下には、【I】,【II】共にblunt-end連結反応が可能な事が判明した。PEG6000添加によってcohesive-end連結反応も飛躍的に増強された。【I】と【II】において、本質的な違いは認められなかったが、酵素-AMP生成反応とnick-sealing反応に対して顕著な違いが見出された。
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