研究概要 |
腎臓近位尿細管刷子縁膜に結合しているγグルタミルトランスペプチダーゼは細胞内では単鎖の前駆体として合成され、糖鎖が結合したのち、細胞内移行して細胞膜上でプロセシングプロテアーゼによる切断をうけて活性なヘテロニ量体の成熟型酵素になることを明らかにしてきたが、61年度は分離刷子縁膜を用いて、前駆体からヘテロニ量体を生成するプロセシングプロテアーゼの性質を明らかにすることに集中した。 Sで標識した分離刷子縁膜を種々のプロテアーゼ阻害剤で処理したのちに37℃30分後に前駆体と成熟体の放射活性を測定することによりプロセシング活性をみると2mM EDTA,EGTA処理で約40%阻害がみられ、2mM phenylmethylsulfonylfluoride(PMSF)処理で約40%阻害が見られた。また2mM EDTAと2mM PMSFの存在ではプロセシング活性の90%が阻害された。一方、種々のプロテアーゼの合成ペプチド基質の効果を同じ系でみるとsuc-ala-pro-ala-MCAや、suc-gly-pro-phe-MCAはプロッセッシング活性を85%阻害し、Boc-val-pro-arg-MCA、Boc-leu-gly-arg-MCA、Ac-ala-ala-tyr-MCAでは30-45%阻害した。ところがBz-arg-MCAやBz-phe-val-arg-MCAでは5mM存在下でもプロセシングは全く阻害されなかった。これらの結果は前駆体のプロセシングに関与するプロテアーゼの基質特異性は極めて高いことをしめしている。さらにプロテアーゼの阻害剤パターンからセリンプロテアーゼまたは金属プロテアーゼが関与しているとおもわれる。また、プロセシングプロテアーゼは膜に結合していると考えられ、TritonX100などの界面活性剤により可溶化した場合は膜標品での活性に比べて30%のプロセッシング活性しか示さなかった。
|