(1)DNA試料の精製。pBR322の閉環状DNAをCsCl密度勾配遠心法で精製した。混在する低分子物質を十分に除くためには、通常のクローニング実験に比較して十分な透折あるいはモルカットによる溶媒の置換を行う必要があることがわかった。 (2)照射装置の改良と線量測定。高エネルギー物理学研究所放射光実験施設BL11Bに設置された軟X線分光器から得られる単色X線を、2枚のマイラー窓を通して空気中に出し、電離箱で照射線量を測定した。リンK殻吸収端(2.15keV)付近の強度は、真空中の試料位置では5KR/秒程度であり、十分実験の行える強度であることがわかった。ちなみに、空気の半過層は1.4cmであった。 (3)DNAの吸収スペクトル。電離箱の前面にDNAフィルム(2mg/【cm^2】)を置き、DNAの吸収スペクトルを測定した。2.153keVを中心とする共鳴吸収によるピーク(まわりの約2倍)が認められた。 (4)照射実験。pBR322DNA溶液2μlをポリプロピレンフィルムの上にスポットして乾燥させた。1μgのDNAが直径0.75〜1μmの小さなかたまりとなった。DNA試料を試料槽(〜【10^(-7)】Torr)にセットして、共鳴吸収のピーク(2.153keV)およびその前後(2.147keVと2.160keV)の単色X線を照射した。復水後、電気泳動法によって主鎖切断、大腸菌の形質転換によって失活を調べた。2.147keVに比較して、ピークの2.153keVでは、1重鎖切断は1.8【〓!(v/6)】2重鎖切断は1.6【〓!(v/6)】生成した。不活性化はピークエネルギーで2.0【〓!(v/6)】となった。主鎖切断と不活性化は、DNA吸収スプクトルとほぼ平行したが、共鳴吸収にともなう著しい効率の増加は認められなかった。
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