研究概要 |
胸腺細胞は放射線感受性が高く, 照射後, 数時間で細胞間期死を起こす. 私達は, この間期死細胞が高度に制御されて起こる過程であり, 生理的細胞死とも共通するプログラム死-Apoptosis(自爆死)の特徴を有することを見い出した. 本研究は, 胸腺細胞の放射線間期死はApoptosisであるとの観点から, 細胞死プログラム発現過程としてのRNA, 蛋白質生成依存性を確認と, 間期死に関連して生成される蛋白質の検索などを行なった. その結果, 1)胸腺細胞をin Vitoro, 1kR照射後の間期死および関連する諸変化は, 蛋白合成阻害剤であるシクロヘキシミド(10-^5M)添加のより直ちに抑制されRNA合成阻害剤であるアクチノマイシンD(10ug/ml)添加1〜2時間で抑えられる. すなわち, 死の直前の蛋白生合成とそれに先行するRNA生合成が必須であることが示された. 2)10kR以上の照射では, 自爆死に特徴的な細胞サイズ減少, DNA分解は起こらず, 壊死にみられる細胞膨化などがおこることがわかった. この高線量での間期死はミクロヘキシミドによっては抑えられない. したがって高線量照射では自爆死発現に要する蛋白質の生合成過程などが障害され, 壊死が起こるものと考えられた. 3)上記の研究から示唆された細胞死発現に必須の蛋白質検索のため, Percoll密度勾配遠心法で分離した生死細胞の蛋白質を, 2次元電気泳動により分け比較した. その結果, 生細胞と比べ死細胞では, 主として細胞質分画の27kDaの蛋白質の出現, 29kDaの蛋白質の消失が起こることを蛋白質染色, ^<35>S-メチオニン取り込みで検出することができた. 本研究により, 胸腺の放射線間期死がRNA, 蛋白質生合成なども要する能動的過程であることを確認, それに関与すると考えられる蛋白質を検出することができた. 今後, これら蛋白質の抽出, 精製と平行して, mRNAの抽出および自爆死遺伝子の解析を進めたい.
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