研究概要 |
武蔵工大炉の水平実験孔に設置されている中性子テレビジョン装置を用いて、3種類の中性子トモブラフィー用サンプルによる実験を行なった。まず直径9.5cmのアルミニウム円柱に直径1.3cmの銅の円柱を中央に挿入した単純なサンプルについて実験を行ない、理論計算データによる中性子トモグラフィー再成画像との比較を行なった。実験データの処理は、通常の重畳積分法を用いて画像再構成を行なったもので、理論計算データは、各方向の中性子のパスに沿った巨視的吸収断面積により計算した投影データを同じく重畳積分法で画像再構成を行なったものである。その結果、アルミニウム円柱中央の銅の断面の再構成画像が、実験データによる方が理論計算データによるものより大きくなることが判明した。この理由を解明するために、中性子ビームの解像度の測定を行なったところ、サンプルとコンバータの距離により多少変化するが、20cm程度離れると10画素程度の透過像のボケが生ずることが分かり、これが再構成画像を大きくする原因であることが判明した。次にアルミニウム円柱に5個の穴をあけ、それぞれに鉄,銅,鉛,ポリエチレン,ステンレス鋼を挿入したサンプルについて実験を行ない、理論計算データによる再構成画像と比較検討を行なったところ、定性的にはよい一致をみたが、やはり実験値による再構成画像の方が計算値より大きくなった。次に更に複雑なサンプルとして、アルミニウム円柱の同心円上に直径の異なる8つの穴をあけたサンプルにそれぞれ水を注入し、中性子トモグラフィー像の測定を行なった。その際、角度分点数を変化させて実験を行ない、投影角として1.8度毎と7.2度毎の測定結果を比較したところ、投影角が小さい程、再構成画像が鮮明になることが分かり、直径1.5mmの水も再構成画像として充分に検出可能であることが分った。
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