1.中部・近畿両地方の各地における歴史時代の日々の天候記録を、10数地点について古文書資料により収集した。対象期間は主として18世紀以降であるが、一部については15世紀にまで溯って作業を進めた。 2.これらの資料に基づき、日々の天気分布から気圧配置型を推定し、年々の季節推移の模様を把握した。今年は特に梅雨季に重点を置き、年々の入・出梅日の推定を通して、梅雨期間の長期的な変動傾向、さらには梅雨期間の降水量の長期的な傾向を明らかにした。 3.入・出梅日については17世紀以後の約300年間と、15世紀の約100年間、梅雨期間降水量については18世紀中頃以後の約250年間の結果を求め得た。 4.結果についての主要なものは次の通りである。 (1)歴史的大飢饉が群発した時代と、梅雨明けの遅い時代との対応がよい。但し、近世初期以前の大飢饉の中には、少雨(空梅雨)との対応例も混じる。 (2)近畿地方中部における梅雨期間降水量には、1720〜30年、1830〜40年、1950〜60年の多雨期、1800〜10年、1930〜40年の少雨期が見られ、120年程度の周期が存在するようである。 (3)近畿地方中部の梅雨期間降水量の長期傾向は、中部地方から瀬戸内海沿岸までの地域範囲の傾向を代表とする。しかしその他の地域についての代表性はあまりよくない。 5.今年度収集した資料の一部はコード化し、データベースへの入力を試みている。しかし収集資料が極めて多く、全部を入力することは今後の課題である。 6.次年度以降は梅雨期間の長期傾向をさらに古い時代にまで溯らせると共に、他の季節の気温、降水量の長期傾向を明らかにするように研究を進める方針である。
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