研究概要 |
1.昨年度に引続き, 中部・近畿両地方の歴史時代の日々の天候記録を, 古文書により収集した. 収集地点数は約20点, 対象年代は主として17世紀以後とした. 京都・奈良については, 15世紀まで遡って収集を行った. 2.収集資料を日ごとに整理し, 天気の推移から年々の季節の進み遅れ, 季節の特徴を明らかにする作業を進めた. 今年度は梅雨の季節に関する検討をほぼ終了し, 他の季節に関する復元作業に着手した. 3.梅雨の季節については, 入・出梅日の推定を15世紀以後の約500年間, 梅雨期間降水量の推定を17世紀末以後の約300年間に関して行った. その他の季節に関しては, 目下資料解析を進めつつある. 4.今年度の主要な結果は, 次のとおりである. 1)出梅日の長期変動には70年程度の周期が検出された. この周期はすでに他の幾つかの自然現象でも指摘されており, それらとの関係が注目される. 2)梅雨期間降水量には10年平均値を対象にした場合, 約120年の周期が認められる. 1710年代, 1830年代, 1950年代の多雨期, 1810年代, 1930年代の小雨期の存在がこのことを裏付ける. 原因については今後の課題である. 3)1771〜1870年の100年間について, 毎年の梅雨の経過を詳細に検討したところ, 集中豪雨型の梅雨は1771〜1790年と1821〜1870年の期間に多発しているのに対し, 空梅雨型の梅雨は1791〜1810年の間に多いこと, またこれと対応して, 6・7月の台風襲来数に明瞭な時代的差違のあることがわかった. 梅雨期間降水量と6・7月の台風襲来数との間には, 連動した長期変動傾向が存在する. 5.収集資料のデータベースへの入力は, 可能な限り継続中である. 6.夏・秋雨・冬の各季節の気候復元作業は, 資料解析の途中であり, 具体的な成果は次年度に提示の予定である.
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