1.古記録からの天気記録収集を、18世紀後半以後気象観測時代に至るまでの間について、夏以外の季節についても補完的に行った。 2.梅雨以外の季節についての気候復元を行った。 (1)台風の襲来状況について、18世紀末から19世紀中頃にかけての長期的傾向を求めた。その結果19世紀初頃には中部・近畿地方に襲来した台風数が目立って少ないこと、1820年代の後半頃から急に台風の襲来数が増大し、19世紀の中頃にかけて台風襲来数のピークが生じていること。 台風襲来の時期については、現在も当時もそれ程著しい違いはないが、当時は9月上旬がやや現在よりも多い傾向のあること、などがわかった。 (2)冬の寒さについて、最近の小氷期のやまといわれている1820年代に焦点をあて、冬季3か月間の月別平均気温の復元を行った。その結果、1月については1822、1826、1830年が、2月については1829年が、12月については1821、1826、1829、1830年が、それぞれ現在に比べて著しく寒い冬であったこと、しかし寒い冬が毎年続いたわけではなく、比較的暖かな冬もあったこと、最近30年間の平均気温に比較すれば、当時は寒かったといえるが、1921〜1950年の30年間と比べれば、著しく低温の期間であったとはいい難く、19世紀初頃の寒さは、気象観測が開始された19世紀後半以降現在に至るまでの間にも経験されたことのある程度のものであること、などがわかった。 3.梅雨期を始め、台風期、冬期の気候復元結果は、これまで日本の他の地域を対象に行われた気候復元結果と大局的には矛盾しない。 4.世界各地との比較については、資料整理が途中である為まだ十分できていないが、必ずしも平行的な変化傾向があるとは考え難い面があること。気候変動メカニズムの推測については目下検討中である。 5.収集資料のうち比較的期間の長いもの数点のコード化作業を進めた。
|