研究概要 |
前年度にひきつづき四万十川(渡川)の河床変動の経年変化とその要因ならびに流域に及ぼす影響について究明せんとして現地調査ならびに資料収集とその解析を行なった. 本年度は支川の中筋川, 後川の既往洪水と改修工事との関係, 砂利採取(本川と同様)と河床変動との関係などについても検討を行なった. 現在までに明らかにしえた点は次の通りである. 1.すでに前年度において, その概要については明らかにしたが, 本川の河床は1971年以来低下傾向を示し, 本邦諸河川の河床変動型としては侵食型ないし安定型に分類される. 「研究代表者, 中山正民教授, 1986」の研究報告でも明らかにされているように, 本河川は, 本邦主要河川中, 洪水流量は多く(計画洪水量, 河口下田で14,000m3/sec), 台風にともなう高水出現頻度の高い河川としては屈指の河川である. しかも本川上流部にダムを有さない河川である. それにもかかわらず下流への土砂の供給は少ない. 従来その要因として, 上流に盆地を有することとか, 河口域の海底の沈下にともなう流送土砂の拡散など説明されてきたが, それだけでは説明しかねる. 2.勿論1960〜1970年代にかけての砂利採取の著しかった時期には河床に凹地状をなす低下部分もみられ, 採取量と低下量とがほぼ対応関係を示す. 河口部においては塩水溯上力が強まり, 海水産の生物分布変化がみられる. 3.河床は, 前年度, 両土佐橋付近から, 上流域に基盤岩石の露出していることを確認したが今回の調査でほとんど源流部に至るまで(一部盆地部を除く)露出していることを確認した. 4.下流部中村市を中心とする沖積平野における沖積層の層厚も地質柱状図や埋積遺物などから判断する限り, きわめて薄く, 少なくとも縄紋海進期以後の堆積速度は年間0.6〜1.5mm程度と推定される. 5.築堤による内水停滞問題が中筋川, 後川の支川を含めきわめて注目される. 6.高水時の溶浮流物質の実測を行ないたい.
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