研究概要 |
遺伝子工学の開発により、酵母を宿主として有用物質を生産することが実用化されている。今まで、目的の遺伝子のプロモーター領域に効率のよいものを使用することに主力がおかれてきた。しかし、宿主側についての検討はほとんどなされていない。遺伝子発現に直接、又は、間接的に関与する諸因子例えば、ベクターのコピー数,安定性,DNAの高次構造,転写,翻訳と各々のレベルにおける改良が期待される。本研究では、1)酵母Schizosaccharomyces pombeの宿主ベクター系のマーカーとなるLEU1遺伝子のクローニングと、その遺伝子の構造解析、及び、2)ベクターの安定性に関わる宿主変異株の解釈を行った。1)Sch.pombeの遺伝子バンクより、大腸菌leuBを相補できるDNA断片をクローンした。サブクローニングにより、大腸菌内での機能領域を求めた後、自律複製能を持つ配列とつないで、酵母に導入し、機能領域を決定した。さらに、ダイデオキシ法により、DNA一次構造を決定した。アミノ酸配列は、酵母LEU2遺伝子と高いホモロジーを示したがコードの使われ方は、S.cerevisiaeに比べ、特に、Arg(CGT)がよく使われて居り、その点では、prokaryote型であった。2)ベクターの安定性に関する核性変異株の解析。2μプラスミドDNAがよく脱落する変異株について、種々のハイブリッドプラスミドを作製して、その安定性を検定した。その結果、複製機能の低下が予想された。又、この変異株内で、より安定に存在するプラスミドを遺伝子バンクより検索したところ、(1)ARS配列を持つDNA断片,と(2)逆位機構に必要な部位を含むDNA断片を持つ2種のプラスミドが高頻度で単離された。(1)は複製開始のチャンスが増大する為、(2)は、逆位による遺伝子増幅の可能性が考えられ、どちらも複製開始に働くステップの能力低下がプラスミドの不安定性をひき起すと推論された。
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