研究概要 |
1.バクテリオファージの連続培養装置セルスタットを改良した。 制御用コンピュータを現代化し操作性のよいものにした。回分培養用ネフェロメータと連続培養用ネフェロメータを連立化し、ポンプ類を全てコンピュータオンライン化したため、回分培養から連続培養まで、全自動培養システムとなった。 2.fdファージの点突然変異体であるfdTや、過去の連続培養中に出現したfdU1と、SAファージ、f1ファージの競争連続培養を行い、それらの淘汰係数を測定した。われわれの標準実験条件下、fdTはfdに対して淘汰係数-0.031,fdU1はfdに対し淘汰係数+0.035をもつ。fdの自然集団中にこの程度の淘汰係数をもつ突然変異体の分布があることを強く示唆しているこれらのデータは、塩基配列空間上の淘汰値曲面の形状が、ダーウィンの自然淘汰の原理に基づいて生体高分子の機能最適化を行おうとする進化機械の実現にとって好都合な形をしていることを示す。 3.fdの遺伝子【VIII】(約200ヌクレオチド)をぎりぎりに含むような断片を切り出すために、部位特異的突然変異誘発により、fdにEcoRI切断部位を導入した。これにより切り出された小遺伝子に集中的にランダム突然変異をin vitroで誘発させることにより、ハミング距離3以内の全ての突然変異タンパクをセルスタット中で淘汰させることができるようになった。 4.in vivo人為淘汰型進化機械においては多数のクローンのもつ酵素の機能をスクリーニングしなければならない。そのためにセンサーとして、ISFETバイオセンサーの適用性をモデル系で検討した。無機ピロホスファターゼによるピロリン酸分解反応は40μlのスケールで十分な応答が得られることがわかった。ちなみに従来、この反応に対し出されていた【H^+】放出モデルは誤りで、【H^+】は吸収される。
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