研究概要 |
非筋細胞の細胞皮質にあるアクチンフィラメントは, 等方構造, 結晶様束状構造, 液晶様構造などの集合状態をとって存在し, 細胞機能に重要な役割を果たしている. また, それぞれの構造は, 固定したものでなく, 外的な刺激等に対して, 変化する. 我々は, これらのアクチンフィラメントの浸透圧の不均衡に伴う集合状態の変化を, 1.オスモメータを用いる方法, 2.フィラメントの近傍から選択的に排除される共溶媒を用いる方法, により研究し, 以下の結果を得た. 1.の方法により, 次の結果を得た. (1)アクチンフィラメントは, 浸透圧の不均衡から生じるosmotic stressに対して弾性的に応答(osmoelastic aeupling)し, 弾性エネルギーを増加させるとともに, 浸透圧の不均衡に伴う水の流れ(volume flow)を減少させる. (2)アクチンフィラメント溶液は, 7mg/mlを境にして, 等方流動相(ゾル)から等方固相(ゲル)に相転移(ガラス転移)する. そしてゲル化に伴い, 浸透圧の不均衡によるvolume flowは全く起こらなくなる. (3)特異的に相互作用するゲルゾリンにより, アクチンフィラメントを短くすると, ガラス転移の濃度が増加する. (4)等方構造を持つアクチンフィラメント溶液に, ある程度以上のosmotic stressを加えると, 束状構造に転移する. そして転移に伴い大きなvolume flowが起こる. (5)アクチンフィラメントを架橋するABPは, osmotic stressに対するゲル相の耐性を増す. 共溶媒として高分子量のポリエチレングリコール(PEG)を用いた2.の方法により, (1)PEGによりある程度以上のosmotic stressを加えると, 光散乱の急激な増加とともに, 等方的に分布していたフィラメントが結晶様構造のバンドルを形成することが電顕により観察され, (2)この現象を利用して, 濃度とフィラメント間の相互作用エネルギーを変数とするアクチンフィラメント溶液の定量的な相図を作成した.
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