研究概要 |
本研究の目的は, ジョセフソン電流がそれ自身で消滅している, 磁性バリアを持つ超伝導体トンネル接合を製作し, これを用いたサブミリ波帯で動作する超低雑音な準粒子ミキサーを開発することである. 特に機械的に丈夫で臨界温度Tcの高いニオブ(Nb)を電極伝導体とすることが特徴である. 本研究の結果は次のとおりである. 1.準粒子ミキサーの性能の理論的評価をおこない, 素子のI-V特性とミキサー性能との関係を調べた. その結果ある程度のリーク電流, エネルギーギャップ構造のぼけがあっても, サブミリ波ミキサーとしての超低雑音性が可能であることが判った. 2.磁性バリアトンネル接合を製作するために必要な, ジフソン・トンネル接合の製作技術を確立するため, 薄膜型ジョセフソン接合Pb/TaOx/Nb接合の製作を試みた. 結果として, ある程度の特性のトンネル接合が製作できたが, リーク電流が大きくその特性は不十分である. 薄膜型磁性バリアトンネル接合 Pb/TaOx/NiOx/TaOx/Nb接合, 薄膜型ジョセフソン接合Nb/TaOx/Nb接合の製作も試みたが, まだ特性の良いものは得られなかった. 今後良い素子の製作条件を明らかにすることが必要である. 3.Nbなどのこれまでの超伝導体を用いる場合に比べ, はるかに高周波で動作する電磁波検出器が期待できる, 高温超伝導体(YBaCuO)を用いる接合の基礎特性である高周波特性を, Nb/TBaCuO点接触接合を製作し調べた. (最高周波数は525GHzのサブミリ波) できた素子はジョセフソン接合でシャピロ・ステップのふるまいは従来のBCS超伝導体のものと類似のものであることが判った. さらに高周波での実験が必要である.
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