研究概要 |
本年度の課題は、(1)本試験研究で試作したマルチアンビル/ガイドブロック/一軸プレス系の高温発生システムを確立すること、(2)実用化したシステムを用いて、珪酸塩系の高温高圧実験を遂行することであった。 (1)の超高圧・高温発生システムの確立と実用化に関しては、本年度に著しい進展を見た。すなわち、アンビル先端のサイズが1.5mmのマルチアンビル装置を用いて、25GPaで2400℃の超高温を安定に発生させることが可能となった。このシステムで実現された高温高圧の条件は、マルチアンビル高圧装置で現在到達可能な、世界最高水準のものである。(2)の珪酸塩系の高温高圧実験に関しては、圧力25GPaまでの条件でいくつかの実験を行った。(a)MgSiO_3-FeSiO_3-Al_2O_3系の相平衡関係を、1800℃において、25GPaまで明らかにした。これによって、正方晶ガーネット(Mg,Fe)SiO_3の安定領域が実験的に明らかになった。(b)珪酸塩多成分系のパイロライト組成、コンドライトマントル組成の相平衡と熔融関係を25GPaの圧力まで明らかになった。これによって、15GPa〜24GPaではメージャライトガーネットがリキダス相となり、これ以上の圧力では、Mgペロブスカイトがリキダス相となることが明らかになった。さらに(c)超高圧下でのメージャライトガーネットと珪酸塩融液間の微量元素の分配関係をEPMA及びSIMSを用いて明らかにすることができた。なおSIMSによる測定は、筑波大学との共同研究によって実施した。以上の珪酸塩系に関する種々の実験により、本試験研究によって試作した高温高圧システムを実用化するという最終的な目標が達成されたと言える。
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