研究概要 |
有機金属気相法(MOCVD)を用いて, 無添加で高抵抗ZnS(>10^6Ωcmと, HIガスを添加し, 低抵抗ZnS:I膜(〜10^<-3>Ωcm)を育成した. 本MOCVD法は, 付加反応を避けるため, ジメテル亜鉛をHeガスに希釈し, H2Sガスの導入口を別々に取り付け, 減圧下で行なった. 電気的特性をホール効果により評価し, 光学的性質をフォトルミネッセンスにより評価した. その結果低抵抗ZnS:I結晶膜は, 室温で約2.67eVに強い青色発光を呈することが明らかとなった. そこで, 次の2通りのZnS青色発光ダイオードを作製し, その基礎特性を研究した. (i)低抵抗ZnS:I単結晶を用いたMIS型青色LED 絶縁層として高抵抗ZnS膜をMOCVD法により付け, Au-ZnS-n型ZnS:IよりなるMIS構造のダイオードを作製した. 順方向4mAで約2.6eV付近に, 室温で青色発光帯が出現した. 外部量子効率は約10-5であるが, 絶縁層の膜厚を制御することによって, 逝く1桁の発光効率の改善が認められた. 順方向電流の増加と共に, 青色発光強度は増加し, フォトルミネッセンスで観測されたドナー・アクセプター対と起源が同一である. (ii)MOCVDZnS:I膜を用いたMIS型青色LED 低抵抗GaAs基板上に積層した低抵抗n型ZnS:I結晶膜に, 絶縁層として(i)と同じく, MOCVD法による高抵抗膜を付け, MIS型素子を作製した. 室温で青色発光は観測されるものの, (i)のLEDに比らべ発光効率は低かった. この原因として, GaAs基板とZnS:I膜界面での欠陥の発生顕著であると考えられる. そのため, ZnS基板を用いたホモエピタキシアル成長についても検討し, (110)面にエピタキシアル成長させた膜が最も優れていることがわかった.
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