研究課題/領域番号 |
61850006
|
研究機関 | 学習院大学 |
研究代表者 |
小川 智哉 学習院大学, 理学部, 教授 (50080437)
|
研究分担者 |
南郷 脩史 ラトックS.E., 代表取締役
小島 崇弘 専修大学, 商学部, 教授 (50070272)
川井 頼能 学習院大学, 理学部, 研究員 (30158860)
坂井 一文 学習院大学, 理学部, 助手 (40205703)
|
キーワード | 赤外線散乱 / 共鳴散乱 / 化合物半導体 / 格子欠陥 / 結晶成長 / 光散乱トモグラフィー |
研究概要 |
光散乱は「光波によって生じた電気双極子からの双極子放射」であるから、光の電場によって結晶内の電子が変位して電気分極が生ずることが必要である。このような視点からすると、電子の変位が赤外線の電場により共鳴的に生ずる場合には非常に大きな光散乱が生ずることになる。半導体の多くは赤外線に対して透明であり。欠陥にトラップされている電子の共鳴周波数は温度で変わるので、試料温度を変えながら赤外線散乱が生じている場所と強度、ならびに、それらの分布を測定することによって、半導体結晶内の電子的欠陥の分布を感度良く検出出来る。 光散乱強度は、波長の4乗に比例するので、YAGレーザーからの二つの光(1.05μと1,32μ)とHeーNeレーザーからの光:1,15μとは、ほぼ等間隔に位置している。これらの光に対する散乱強度の波長依存性にローレンツ式を適用すると、共鳴周波数と減衰係数が求まる。この結果、十分熱処理されていると考えられる欠陥に帰属している散乱中心では減衰係数が小さく共振周波数が高くなっており、結晶成長後に導入されたと思われる転位線などに析出した粒子からの散乱では共振周波数が低く、また、大きな減衰係数を示した。 そこで、10数度Kまで冷却できるクライオスタットを作り、これでGaAs結晶冷やしながら光散乱強度を測定した所、最低温度に到達する途中で赤外線の散乱強度が最大になることがわかった。このことからGaAsからの赤外光の散乱はローレンツ型の共鳴であることが確認出来た。 結晶に含まれる欠陥には、転位線のように結晶の成長を本質的に左右するものと、成長後の熱履歴を敏感に反映するもの、成長条件の変動で導入される弧立した点欠陥などがあるが、いずれも結晶成長状態を記録した指標と見做すことが出来る。とくに、赤外線光散乱強度は上述のように帰属している欠陥により異なり、また、大きな結晶を非破壊的に調べることが出来るので、欠陥相互の位置的関係を明瞭に把握することが出来るので、結晶の成長履歴を明らかにするのに非常に有効である。これらの目的を達成する為に温度可変型赤外線共鳴散乱トモクラフィー装置を開発し、初期の目的を達成した。
|