研究概要 |
赤外線映像装置を用いて構造部材の変形に伴う弾性応力分布, 塑性域, き裂まわりの破壊力学パラメータである応力拡大係数KおよびJ積分等を計測する手法の開発を行った. また温度分布の不連続を検知することによりき裂等の欠陥を検知する手法の開発も併せて行った. まず, 1秒間に20画面の熱画像が得られる赤外線装置サーマル・ビデオ・システム(TVS)を用いてリアルタイムに応力測定を行う方法を示し, この方法の特色および問題点を論じた. またこのシステムが弾性範囲よりも塑性範囲の計測に適していることから, き裂まわりの塑性のひずみのIntensityを表わすパラーメータJ積分を測定する方法を新たに開発し, 実際の計測データおよび今後改善すべき点を示した. さらにこのシステムを用いてき裂を検知する方法として, 内部加熱法, 高周波加熱およびレーザー加熱法の3者を試み, それぞれの長所・短所について比較検討を行った. 一方, 英国で開発された赤外線応力測定装置STATE8000はデータ処理に相関理論を用いて弾性範囲の応力分布が精度良く求められる点に特色がある. 本研究においては本システムを用いてき裂まわりの弾性の特異場を表わすパラメータKを測定し, 本システムのこの分野への応用の有効性を示した. ただし本システムは弾性変形に基づく微小温度変化以外の全ての温度情報をノイズとしてカットしてしまうため, TVSを用いて上に示したような多様な使い方はできない. また計測はリアルタイムではなく一画面の応力画像を得るのに時間がかかる難点がある. 以上, 本研究は赤外線映像装置を応力解析, 破壊力学パラメータの解析およびき裂検知等, 材料強度に関わる諸問題に応用する際の手法を開発したもので, 実験によりこの分野への応用が有望であるとの見通しを得ることができた.
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