本研究では、空気圧システム設計の上でi)コンピュータの情報処理機能でカバーできる機械的機能を、ハードウェア部分から徹底的に削除し、機械系でなければ絶対実現出来ないものだけ、機械でつくりあげるということで簡素化を計る、ii)エネルギーフローを制御し易い機構を付加することで、従来より高いエネルギー変換効率をもたせ、エネルギー源および変換装置の小型化を計る、というコンピュータと機械の有機的結合を目指した制御優先型機械という新しい概念を導入し、携帯可能な人工心臓用空気圧駆動源を開発することを目的とした。 システムとしては多くの病院で使用経験が有り、現在の人工心臓駆動ソフトウェアをそのまま使用できるなど汎用性が高いことを重視して、電磁弁駆動方式を採用した。すなわち正圧(陽圧)タンクと負圧(陰圧)タンクの内圧を自動制御することで、任意の設定圧に一定に保ち、各圧力タンクに接続された電磁弁の開閉により空気圧パルスを作り出す方式とした。 具体的な空気圧回路はつぎのような構成とした。i)左心用と右心用血液ポンプの駆動圧がことなることから、圧縮機を2台直列に配置した多段圧縮方式とした。ii)システムは多入出力の干渉系を構成するため、制御量に優先順位をつけ、左心駆動圧、右心駆動圧、負圧の順に圧力を整定させていく方式を採用した。 以上の構成を基本システムを設計試作した。この結果、装置はカードで携帯する方式で、外形は円筒系で、その寸法は直径が362[mm]、高さは504[mm]となった。またシステム全体の質量は14.2[kg]となり、携帯するに十分小型軽量な装置に仕上げることができた。
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