研究概要 |
集積回路素子の層間絶縁膜や最終保護膜として、シリコン窒化膜が使用されるようになり、これをプラズマプロセスで製作する。一般的には、電子素への適用のため、高周波プラズマにより300度程度の低温で行なわれる。しかし、この温度は実用上まだ高温と言わざるおえず、更に低温でのプロセスが要求されている。本研究では、この要求を満足すべく、堆積基板非加熱で低周波(50Hz)プラズマCVDによりシリコン窒化膜を形成するプロセスを考え、実験的にこのプロセスが低温で良質な薄膜を得る方法の一つであることを見い出した。この実験結果を次に述べる。 1).室温低周波プラズマCVD法により堆積したシリコン窒化膜の物理的電気的特性は、屈析率:2,誘電率:8.0,抵抗率:【10^(15)】Ωcm以上,絶縁破壊電界:【10^6】V/cm以上,IR吸収:Si-N》Si-H,色:無色,堆積率:50【A!゜】/min,以上,等が得られ、これらの値は、加熱・高周波プラズマCVDによる膜質と全く変わらず、低周波プラズマが低温で十分実用されるプロセスとなりえることが明らかとなった。 2).低周波プラズマCVDにおける工業化プロセスとしての必要条件は、まず大面積上への均一堆積である。本実験では、5インチSiウェハー上に薄膜を約1000【A!゜】堆積し、3%以内の膜厚分布を得ている。 3).低周波プラズマCVDでは、荷電粒子による膜へのダメージが大きいと考えられるが、界面準位密度および固定電荷密度は、それぞれ約【10^(10)】【cm^(-2)】e【V^(-1)】、【10^(10)】【cm^(-2)】であり、ダメージが少ないことがわかった。このように、堆積基板非加熱においても低周波プラズマを使うことにより非常に良質な膜が形成される理由について、プラズマの発光分光スペクトルやマスフィルターによる生成物等の観測、更に理論的な手法として電算機シミュレーション等により研究を行なっている。この点に関するデータは集まりつつあり、62年度の解決課題の一つと考えている。
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