研究課題/領域番号 |
61850069
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
日比野 倫夫 名大, 工学部, 教授 (40023139)
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研究分担者 |
花井 孝明 名古屋大学, 工学部, 助手 (00156366)
杉山 せつ子 名古屋大学, 工学部, 助手 (00115586)
下山 宏 名古屋大学, 工学部, 助教授 (30023261)
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キーワード | 電子レンズ / 球面収差補正 / 薄膜レンズ / 電子プローブ / 走査透過電子顕微鏡(STEM) |
研究概要 |
1.実験に使用するSTEM装置の真空排気系に、備品として購入したターボ分子ポンプを取付け、さらに主配管の排気抵抗を従来より小さくした結果として、電子線照射による試料の汚染が軽減されることを確認した。 2.高分解能STEMを実現する上で重要な信号電子の検出方法について、識別可能な最小のコントラストに着目して検討を行い、次の結果を得た。 (1)電子の平均自由行程の6割程度までの薄い試料に対しては、明視野法より暗視野法が有利であり、厚い試料では逆に明視野法が有利である。 (2)球面収差補正を行って大きな角度の電子まで利用した際に起こる信号電子の検出効率の低下は、通常の5倍の大きな開口角に対してもたかだか5割程度であり、補正の効果による像のSN比の向上が期待できる。 62年度には、上記の信号電子に加えて薄膜で散乱された電子の影響をも考慮して、最適な検出系を実現する予定である。 3.薄膜レンズ特性の計算の結果、設計上有用な以下の知見が得られた。 (1)3次の球面収差の補正時に電子プローブ径を決める5次の球面収差は、薄膜レンズの2枚の電極の間の距離を離したときに減少する。 (2)薄膜レンズをプローブ作製用磁界レンズ主面付近に置いたとき、5次の球面収差が小さく、補正電圧の低い、最適な動作条件が得られる。 4.超高真空排気装置に備品として購入した膜厚モニタと蒸着用電極を組込み、膜厚制御しながらカーボン蒸着膜を作製した。その結果、薄膜レンズ用として適当な8〜10nmの膜厚が安定に得られるようになった。 5.STEM像をコンピュータに取込むシステムを構築し、これを用いて、高分解能STEM像に対する量子統計ノイズと支持膜厚の変動によるノイズの影響を明らかにした。62年度にはこのシステムを拡充し、補正による像の改善を定量化する予定である。
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