研究概要 |
本研究では、眼球運動等の分析を通じて、脳幹部を中心とする神経系の診断システムの実用化を目標としているが、本年度は、現在迄に得られた臨床データをもとに、診断パラメータを算出するためのハードウェア部分の設計・製作を中心に研究を進めた。その結果、眼球運動の情報を連続してコンピュータにとり込むためのA/D変換部,データバッファー部,主たる処理を行うCPU(UX300F【II】)へのデータ転送部について、ハードウェア,ソフトウェアともに設計・製作を完了した。 また、信頼度の高い診断パラメータを得るために、アーティファクトの最大の原因である眼瞼運動の評価、さらには、脳幹部神経系の働きに重大な影響を及ぼす脳内循還の評価法についても検討した。その結果、通常は雑音として排除してしまう眼瞼運動自体にも神経系異常(例えばBell麻痺)を検出するのに有効なデータが含まれることが明らかとなった。また、眼球運動測定用電極の接触低抗をチェックするのには通常、直流が用いられるが、50KHz程度の高周波を用いて4電極法により頭部の電気インピーダンスを測定することにより、脳に供給される血流脈波の状態、ひいては頭蓋内庄上昇等による脳幹部の阻血の状況等についての情報も得られることが明らかとなった。平衡神経系障害の多くは脳幹部の血行障害が何等かの形で原因となっている。神経系診断に於て単なる表面上の異常検出のみならず、これと関連の深い眼瞼運動や脳幹部血行状態の計測をも総合した計測システムの必要性が認識された。また、高令者では、長時間の誘発眼球運動検査自体が大きな負担になることも明らかになったので、高令者向きに刺激パターン・測定時間等のプロトコルを別途作製すべく、現在検討を行っている。
|