研究課題
試験研究
造船工学の特徴の一つに厚板の曲げ加工がある。船体は流体力学的特性のよい曲面で構成されているため、建造時において鋼板の曲げ加工が重要となる。造船工学では曲面板を自由に製作できる多点プレスを開発することが長年の悲願であり、現在もなお達成できていない。特に近年のように工場内の近代化、自動化が叫ばれるようになると、熟練工に頼らなくとも所定の加工ができる装置を開発することが急務である。本研究では、実用多点プレスによる鋼板の塑性曲げ加工の開発に必要な問題点の摘出とその解決法の発見のため、1)鋼板の自動曲げ加工用多点プレス試作機の開発 2)試作機の運転と実験データの蓄積 3)曲げ加工解析用有限要素プログラムの開発 4)自動曲げ加工の実用化への課題 について検討した。試作機は6列×6行の36本の多点プレス機であり、550×550ミリメートルの板幅から1050×1050ミリメートルの板幅まで実験可能であり、全荷重は20トンである。板厚4、5、5.6ミリメートルの鋼板100枚程度について実験し、シリンダー型曲げ、枕型曲げ、鞍型曲げのデータを得た。一方大撓み弾塑性板曲げ解析用有限要素法プログラムNCBENDを開発し、実験データとの対比を行った。NCBENDの有効性は確かめられたが、実験値と計算値との一致度が低く、実用化への大きな課題が残った。そこで、写像の概念を導入した加工曲面の決定法を確立し、実用化への可能性を示した。本方法によると、試作機を製作した場合、或る程度の実験を実施し、試験機の特徴を把握すれば、計算プログラムを媒介として、加工設定曲面を推定できることになり、実用化の可能性が高いことになる。又本研究における自動化の装置が実用化できない場合にはガス炎による線状加熱法が重要であり、その基礎的研究を実施したと共に、本研究の範囲では加工不可能な厚板の曲げについても基礎的な検討を加えた。
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