海洋波は一般に短波頂不規則水波であり、また確率過程でもあるので、波周波数と波方向角の関数として表される方向性波スペクトルを持つと言われている。一方、方向性波スペクトルの計測法に関して種々の提案がなされているが、実行が困難であったり、得られたデーターの解析処理が著しく複雑であったりして、日常的に使用できる実用的計測解析システムは開発されていない。本研究では、試験水槽内に種々の特性を与えた人工不規則短波頂水波を発生し、その波を計測する事によって、方向スペクトルの各種の測定法を比較検討し、実用的な多点波高測定法の開発およびそれから方向スペクトルを求める実用的な解析システムの開発を目的としている。今年度研究の主目的は任意の方向性スペクトルを有する短波頂不規則深水波を、長水槽内に発生可能な新型式の多分割造装置の設計製作にあった。新造した16のユニット造波機は、新型式のプランジャ型のものであり、使用した小型高精度ACサーボモーターの出力に比し高い波高が精度よく得られる。各ユニットは電気制御部を持ち、別々のアナログ造波信号が与えられ希望する短波頂不規則水波を発生させる。これらのアナログ造波信号は1台の多チャンネルDAコンバーターつきデーター処理用コンピューターから送られる。本装置の各所に新しい考案が入れられているが総合的に満足すべき装置が完成し所期の運転性能を持つことが確認された。一方、方向性波スペクトルを測定するためには水面上の多点で波高を計測しなければならない。実海面で容易に使用できる型式の多点波高計の開発も本研究の主テーマの一つである。この目的のためにビデオ式多点波高計が開発された。ビデオ画面として水面を記録し、その画面上の多点の波高時系列を同時に読み多チャンネルの時系列としてディジタルコンピューターに記録される装置であるが、本装置も試用の結果、ほぼ所期の性能を持つ事が認められた。
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