研究概要 |
ロール急冷凝固装置を用いて、Al-8wt%Fe合金を基本としてこれらに2%Ce、0.7%Zrを単独並びに同時添加した合金において超急冷凝固材を製造し、これまでにない超微細組織と多量の合金元素の強制固溶による強化及び新しい準安定相による析出強化を行った新しいアルミニウム材料の研究を行った。双ロール法により【10^5】℃/sで急冷凝固した幅5〜10mm、厚さ50〜60μmのリボン状試料において、厚さ方向の冷却速度の違いにより組織形態の異なる2つの組織領域zoneAとzoneBが形成された。ZoneAは過飽和Al固溶体中に約10nmの微細準安定相が均一分散した組織で、zoneBは過飽和度が少し低いAl固溶体セル組織でその境界は微細な金属間化合物で構成されている。急冷凝固したAl-8%Fe合金の硬さは通常のAl合金材料に比べて著しく高く、zoneAでHv250,zoneBでHv150であった。この急冷凝固材の耐熱性並びに押出し等の加工のための加熱条件を調べる目的で種々の温度で加熱処理した時の硬さ変化を調べた。300℃,100hの加熱で硬さはAl-8%Fe合金zoneAで低下したが、Ce,Zr添加合金では全く変化せず高温で安定であった。350℃,400℃加熱ではzoneA及びBとも軟化を生じ、Al-8%Fe合金材での低下は大きいが、Ce,Zr添加によりその低下度が小さくかつ軟化が遅滞する。Al-8%Fe合金材の硬さの低下は、zoneAではAl-Fe系の準安定棒状相の析出とその粗大化のため、zoneBではセル壁を構成する微細な針状準安定AlbFe相の粗大化に起因する。これに対してCeを添加すると熱的に安定なAl-Fe-Ce,Al-Ce準安定相が形成する。また、Zrを添加するとセル組織が微細化され、微細準安定【Al_3】Zr相の析出によりAl-Fe系準安定相の成長が阻止される。これらの効果によりCe,Zr添加合金では高い耐熱性を示し、とくにCe,Zr両元素を同時添加した合金は高温強度材料として期待される。
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