研究概要 |
微粉体の反応性に対する粉体表面層の役割は大きい. 本研究は放射性核種^<226>Raのα-壊変(^<226>Ra^^α^<222>Rn)の反跳エネルギーを利用して, 微粉体表面層約50mm厚さに^<222>Rnをラベルし, この粉体を昇温加熱する過程で放出する ^<222>Rnの挙動を追跡し, 粉体表面層の熱的変化挙動を研究するエマネーション熱分析法(ETA)を開発することである. 研究成果は次の通りである. 1.ETA測定条件の確立: ETA装置はNetzsch社製ETA403-STA409型のETA-TG-DTA同時測定装置であり, 親核種, 226Raラベル方法, ^<226>Ra水溶液(4〜10μCi/ml)による表面含浸法;昇温速度, 10°C/min;キャリヤーガス, N2(50ml/min);試料, 0.1g;時定数, 100S. 2.粉体試料の調製: 異なる出発物質を用い, 焼成温度を変化させ, 広範囲に調製履歴の異なるAl_2O_3, Fe_2O_3, TiO_2, ZnO粉体試料を作製した. つづいてこれらの粉体を遊星型微粉砕機(Fritsch,P-7型)およびモーターグラインダー(Fritsch,P-2型)で15〜600分粉砕し, 極微粉粒度測定器(昭和電工,PS-2型)で-5μm〜+45μmの範囲で種々の粒径に篩分し, 約100種類のETA試料を調製した. 3.粉体表面層のETA評価: 上記試料に対するETAピークは, それらの物質の格子イオンの自己拡散の開始温度Ts=(0.4〜0.5)Tm, (Tm=融点K)を境として, それより高温側(ピークII), 低温側(ピークI), Ts付近(ピークI')に現われる3種のピークに大別され, ぴ-くIIはさらに, ピークIIa(低温), IIb(高温)に分離した. ピークIは表面の微細構造に, ピークIIaは粒界のような欠陥構造に, ピークIIbは典型的なその物質のピークにそれぞれ対応し, メカノケミカル効果はピークI, I', IIaに特徴ある挙動を示した. ETAは粉体のキャラクタリゼーションに対し, 新たな情報を提供する興味ある手法と考えられる.
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