研究概要 |
1.天然鉱物の硫酸処理;当初の予定よりスケールを縮少して、青森県産クリストバライト岩の硫酸処理を行った。アルミニウムや鉄の含有率は低いが、硫酸処理によるこれら金属の除去率は低かった。結晶構造や結晶化度にはほとんど変化は認められなかったが、反応性は幾分向上した。 2.ZSM-5の合成;主に硫酸処理クリストバライト岩を原料とし、反応混合物の組成:〔0.05〜0.20【(TPA)_2】0-O〜0.20【Na_2】O-x【Al_2】【O_3】-Si【O_2】-50【H_2】O〕,温度:130〜170℃,時間:6h〜5dayの条件でZSM-5の合成試験を行い、最適条件〔【(TPA)_2】O/Si【O_2】=0.10,【Na_2】O/Si【O_2】=0.10,170℃,2day〕を得ると共に、ZSM-5の合成に関する速度論的パラメーター〔核発生および結晶成長の見かけの活性化エネルギー:各々51および44KJ/mol〕を得ることができた。また、α-石英の結晶化を抑制する条件も把握した。さらに、未処理クリストバライト岩を原料とした合成試験も数例行い、上記の結果との比較を行った。 3.生成ZSM-5によるフェノール類の吸着;フェノールをはじめとし、p-位に各種置換基のついた6種のフェノール類について水溶液からの吸着試験を行い、これまで得た基礎研究の結果との比較を行った。アルミナフリーのZSM-5類似体であるシリカライトに比べると幾分低いものの、高い吸着能を有していることが明らかとなった。置換基の効果をみると、エチル基>メチル基>ニトロ基>クロロ基の順に吸着され、tert-ブチル基のようにサイズが細孔径の6【A!°】より大きいものはほとんど吸着されなかった。以上の結果、新規の疎水性無機吸着剤となり得ることが示された。 4.今後の展開;試験研究は実用化に結びつけるための研究である。この点から考え、今後は硫酸処理しないクリストバライト岩に対象をしぼり、ZSM-5の合成試験を詳細に行いたい。また、フェノール類以外の有機化合物の吸着および脱着試験も行いたい。
|