研究概要 |
層状結晶β-ZrNclを電極として還元・酸化を行うと、リチウムが層間にインターカレーション・デインターカレーションし、電極は淡い黄緑色から黒色に変化する。このエレクトロクロミック現象を表示素子に応用することを目的として研究を行っており、本年度は以下の知見を得た。 1.β-ZrNcl層状結晶合成法の確立:モノアミドZr【Cl_3】(【NH_2】)・X【NH_3】の熱分解およびZr,Zr【H_2】の【NH_4】Clによる直接酸化の方法を開発した。特に高純度なβ-ZrNClが高収率で得られる後者の反応について詳細に調べ、中間体【(NH_4)_2】Zr【Cl_6】の生成と熱分解が起こることを明らかにした。: Zr【H_2】+6N【H_4】Cl→【(NH_4)_2】Zr【Cl_6】+【4NH_3】+3【H_2】 【(NH_4)_2】Zr【Cl_6】→β-ZrNCl+5HCl+N【H_3】 【(NH_4)_2】Zr【Cl_6】蒸気相の熱力学特性についても調べた。 2.β-ZrNClへの水素吸蔵:β-ZrNClを【NH_4】Clおよび水素と高温で処理すると、水素が吸蔵されることを見い出した。 3.スパッタ蒸着法による薄膜の作製:β-ZrNCl粉末をターゲットとしてrfマグネトロンスパッタ蒸着装置を用いて、低温での薄膜作製を試みた。雰囲気ガスとして、Ar,Ar-【Cl_2】,Ar-【NH_3】などを用いたが、一段でβ-ZrNCl薄膜を得るに至っていない。引き続き作製を試みる。 4.CVD法による薄膜の作製:【(NH_4)_2】Zr【Cl_6】蒸気の熱分解を利用するβ-ZrNCl薄膜作製を行った。アンモニアをキャリャガスとして用い、基板温度500〜600℃で低圧CVDを行うと、均質なβ-ZrNCl膜が得られることがわかった。自記分光光度計による光学特性の測定を行い、薄膜の可視光領域での光透過性は良好で、2.9eV付近にバンド吸収端があることを明らかにした。ECD素子を試作するため、引き続き透明導電性被膜ガラス基板上への薄膜作製を試みる。
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