今井淑夫により、ポリイミド累積膜が作製され基礎的な評価がなされた。すなわち、ポリイミドの前駆体として容易に入手可能なポリアミド酸を、長鎖アルキルアミンと混合してその塩とし、気/水界面で単分子膜とする。このものを基板上に累積して累積膜とし、さらに無水酢酸一ピリジンで処理して、ポリイミドの累積膜とした。次に、このようにして作製したポリイミド累積膜の高分子鎖の配向を偏光赤外スペクトルおよび偏光紫外スペクトルの縦、横偏光時の二色比により評価した。垂直浸積法による累積の場合、ポリアミド酸アルキルアミン塩累積膜の表面圧が大きければ大きいほど、大きな二色比が得られた。また、累積速度に二色比は依存しなかった。一方、水平付着法で累積したときには、二色比は1となることから、基板の引き上げ時に水面上の単分子膜が引っ張られることにより、配向が生じるものと思われる。つぎに、滝口康之により、垂直浸積法により作製した累積膜を液晶配向膜に応用し、ネマティック型液晶セル(TN型、ホストゲスト型)をポリイミド累積膜の層数を変化させて作製した。液晶配向性の評価は、TN型の場合、直交偏光下で暗視野となるときの吸光度と、セルをその位置から45゜傾けたときの吸光度との比から行なった。またホストゲスト型の場合は、上下平行配向するようにセルを組み、直交偏光下、90゜セルを回転させて、吸光度の比から行なった。その結果、わずか二層のポリイミドLB膜でも液晶が配向し、その配向方向は基板の引き上げ方向に一致することがわかった。また層数を変化させると、5層累積膜において、最も良く液晶が配向し、それ以上の層数ではむしろ配向性が悪くなることが明らかとなった。実際に、ITO上にポリイミド累積膜を作製し、液晶セル(TN型)を試作し、電圧をかけたところ、電場による、良好な液晶の反転が観察された。このように、本研究は実用化される可能性が十分高いものと思われる。
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