昨年度の研究によって可溶性ピリジニウム型ポリマーが水中のバクテリアに対して強力な殺菌作用を示すことが見出された。この種の殺菌の第1段階は殺菌剤の細胞表面への吸着であると考えられ、ピリジニウム型ポリマーが細胞に対して強い親和性を示すので、これが殺菌力の強さとして現われたものと思われる。そこで本年度の研究では、可溶性ピリジニウム型ポリマーが水中微生物に対する凝集剤として作用するかどうかについて検討を行った。凝集剤の場合も微量の添加によってその目的を達することができるので、表面だけが利用される吸着捕捉剤の場合と異なりポリマーを有効に活用することが可能である。ピリジニウム型ポリマーの細胞付着作用が他の材料と比較すると著しく強いので、凝集剤として用いた場合にもこの機能は発揮されるものと期待した。これまでにも水中微生物を凝集沈殿法によって除去する試みはなされているが、いずれの場合においても粘土質の懸濁物質の凝集沈殿を併用しないと効果がないと報告されている。懸濁物質の凝集沈殿に伴なう形で微生物も除去されている。可溶性ピリジニウム型ポリマーとしてポリーNーベンジルー4ービニルピリジニウムブロミドを用いた。微生物として4種類のグラム陽性バクテリア、5種類のグラム陰性バクテリア、および2種類の酵母を用いた。これらの微生物の懸濁液に2〜10mg/lの可溶性ピリジニウム型ポリマーを添加すると、微生物がフロックを形成して白濁しやがて沈降した。凝集剤の効果は生成したフロックの沈降速度によって評価した。粘土質の懸濁物質を併用することなく微生物の凝集沈殿に成功したのは世界ではじめてである。この作用は化学構造のよく似た対応する低分子モデル化合物には全く認められず、顕著な高分子効果のあることが分った。しかし重合度を250〜1300と変化させても、その凝集作用には大差は認められなかった。微生物の簡便な除去方法として、今後の展開が期待される。
|