研究概要 |
外分泌腺の腺房は分泌の生理的機能単位であり、複数ケ(約100ケ)の腺房細胞により形成される。腺房内の各細胞は隣接細胞とギャップ結合を経てお互いに電気的に結合している。最近Nehrらによって一本の吸入ピペット電極を使用するいわゆるパッチクランプ法が単離腺房細胞標本に応用され、直接あるいは雑音分析法により間接的に単一イオンチャネル電流の解析が行われるようになった。この研究により外分泌腺分泌機構の研究は飛躍的に進展した。しかし、酵素処理によってえられる単離細胞標本では、シグナル変換蛋白が流出し、分泌刺激に対する反応が低下する傾向にある。また細胞膜の機能的極性が失われる可能性を指摘されている。したがってより生理的である腺房標本のレベルで電流雑音解析を行ってチャネル電流を解析し、単離細胞標本での解析結果と比較することは重要である。しかし、腺房の入力抵抗は低いので、この標本にパッチクランプ法を応用することはできない。また2本の細胞内電極を用いるクランプ法も電極雑音が大きいため、適用できない。この研究の目的は2本のパッチピペット電極を用いて、上記の問題点を克服する膜電流計測システムを開発することである。本年度は、1)電位測定および通電両電極にギガシールパッチピペットを使用し、電極間の結合容量に由来する動作不安定を抑制し、測定系の雑音が0.1Hzで【10^(-23)】【A^2】/Hz以下の膜イオン電流計測システムを作製し、その作動特性を調べている。2)現有する2台のいわゆるパッチクランプシステムと、購入した電子恒温装置,顕微鏡テレビカメラ,マイクロフォージを使用して、2つのピペット電極を同一腺房内の2細胞をそれぞれギガシールクランプし、試作した膜イオン電流計測システムが腺房標本に応用しえるという結果をえた。3)今後計測システムに改良を加え、外分泌腺腺房の膜イオン電流を解析する。
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