プロテインキナーゼCの抗体作成、クローニング及び本酵素の特異的抑制剤の開発研究

1988 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 61870015
• 研究機関: 神戸大学
• 研究代表者: 西塚 泰美 神戸大学, 医学部, 教授 (10025546)
• 研究分担者: 荻田 浩司 神戸大学, 医学部, 助手 (60204103) ; 吉川 潮 神戸大学, 医学部, 講師 (40150354) ; 岸本 明 神戸大学, 医学部, 講師 (60127363)
• キーワード: プロテインキナーゼC / 特異抗体 / クローニング / 生理活性物質 / 受容伝達機構

研究概要

プロテインキナーゼCを介する受容伝達機構は、広い領域にわたり細胞反応の基本構築、病態解析の手がかりとして注目を集めている。本研究では外界シグナルに対する細胞応答に際して重要な役割を担うプロテインキナーゼCに集点をあて、最終年度の研究を行い以下の成果をおさめた。プロテインキナーゼCは当初4種類のクローン、α、βI、βII、γが分離されていたが、これら以外に少なくとも3種類の分子種、δ、ε、ζ種が存在することが明らかとなった。これらの分子種には、α、βI、βII、γに共通して存在するC_2領域が存在せず、また先の4種とは活性化機構が異なっており、別のグループを構成していると考えられた。また。本計画の中、過去2カ年の研究によって得られたプロテインキナーゼCに対するモノクローナル抗体、および各分子種の一次アミノ酸配列より推定されるポリペプチドを抗原として作成した各分子種に対する特異抗体を用いた組織化学的解析および生化学的解析の結果、α、βI、βII、γ種についてはそれぞれ特有の分布を示すことが明らかとなった。即ち、α種はほとんどすべての組織、細胞に共通して認められた。βI、βII種は組織により発現が異なり、γ種は中枢神経組織のみに発現されており他の末梢組織には検出されなかった。δ、ε、ζ種についてはまだ特異抗体は得られていないが、RNAブロットによる解析によりδ、ε、ζ種についても組織による発現が異なることが示された。また、ラット脳組織より精製したプロテインキーゼC分子種α、β、γを用いて各種の本酵素活性調節物質の効果を検討した結果、ホスファチジルエタノールが生理的カルシウムイオンの存在下でγ種のみを活性化することが明らかとなり、分子種特異的活性化物質および抑制剤の検索方法を確立し、本研究の所期の目的を達成した。

研究成果

• [文献書誌] Ono,Y.: FEBS Lett.203. 111-115 (1986)
• [文献書誌] Ono,Y.: FEBS Lett.206. 347-352 (1986)
• [文献書誌] Ono,Y.: Science. 236. 1116-1120 (1987)
• [文献書誌] Kikkawa,U.: FEBS Lett.217. 227-231 (1987)
• [文献書誌] Kitano,T.: J.Neurosci.7. 1520-1525 (1987)
• [文献書誌] Saito,N.: J.Neurosci.8. 369-382 (1988)
• [文献書誌] Ase,K.: J.Neurosci.8. 3850-3856 (1988)
• [文献書誌] Sekiguchi,K.: J.Biochem.103. 759-765 (1988)
• [文献書誌] Nishizuka,Y.: Nature. 334. 661-665 (1988)
• [文献書誌] Asaoka,Y.: FEBS Lett.231. 221-224 (1988)
• [文献書誌] Ono,Y.: J.Biol.Chem.263. 6927-6932 (1988)
• [文献書誌] Ono,Y.: Proc.Natl.Acad.Sci.USA. (1989)
• [文献書誌] Kikkawa,U.: "Annual Review of cell Biology,volume 2" Annual Reviews INC., 149-178 (1986)
• [文献書誌] Kikkawa,U.: "The Enzymes,volume 17" Academic Press, 167-189 (1986)
• [文献書誌] Kikkawa,U.: "Cold Spring Harbor Symposia Quantitative Biology" Cold Spring Harbor Laboratory, (1988)
• [文献書誌] Kikkawa,U.: "Annual Reviews of Biochemistry,volume 58" Annual Reviews INC., (1989)