研究分担者 |
楠 慎一郎 アドバンス株式会社, 生命科学研究所, 所長
大塚 英昭 広島大学, 医学部, 助教授 (00107385)
亀井 幸子 東京大学, 医学部, 講師 (40107503)
笠間 健嗣 東京大学, 医学部, 教務職 (80124668)
清水 孝雄 東京大学, 医学部, 助教授 (80127092)
KUSUNOKI Shin. Advance Co., Inst. life Sci., Director
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研究概要 |
脳腱黄色腫(CTX)は血清や小脳・腱などにコレスタノールが蓄積する先天性の代謝異常であるが, 生化学的診断は血清コレスタノールの定量に基づいて行われている. 1976年にGC-MSを用いた定量法が確立されて確定診断が可能になったとはいえ, 質量分析機という特殊機器を用いるために, 汎用性に欠ける嫌いがあった. そこで, もっと簡便で高精度な分析法の開発が待たれていたが, 今回広く普及している高分解能液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いたCTXの診断システムの開発を行った. 【方法】血清100μlに一定量の内部標準物質を入れて鹸化し, 不鹸化物をヘキサンで抽出する. 抽出されたステロールをベンゾイル化してHPLC分析に供する. HPLCのカラムはSBC-ODSを用い, アセトニトリル・水・酢酸の溶媒系で溶出する. 検出はUV_<228nm>でモニターする. 分子吸光係数は12000である. 【結果】血清中のステロールエステルの鹸化は60分以内に完了する. ベンゾイル化に要する時間は5分で十分であり, HPLCに要する時間は1検体あたり約40分であった. 従って血清を手にしてからデータが得られるまでの時間は約2時間である. 検量線の直線性はコルステロールで0〜3mg/m1, コルスタノールで0〜100μg/m1の間で確認され, 再現性は良好であった. この方法はコレステロールとコレスタノールの分析だけではなく, シトステロールやカンペステロールの様な植物性のステロールの定量にも応用でき, β-シトステロール血症のような先天性代謝異常の診断にも応用できる. 【考察】脳腱黄色腫はわが国に於て既に50例以上が見つかっており, 最近ではケノデオキシコール酸の投与による治療の試みも行われる様になった. この診断・治療に於て血清コレスタノールの定量はキーポイントとなるが, 今回の研究によりHPLCによる方法が確立されたことは汎用性という点から意義が深い.
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