アミノ酸代謝により生じた有毒なアンモニアは肝臓に存在する尿素サイクルの働きにより尿素に転換・解毒され体外へ排泄される。尿素サイクルを構成する5種類の各酵素について先天性欠損による代謝異常症が知られており、我が国でも発症例が多く、重篤な高アンモニア血症を呈する。予後は不良の場合が多く、また有効な治療法がなく、発病の予知・予防法の開発が重要である。一方わが国では糖尿病患者は約150万人おり、この中のほとんどがインスリンが効果を示さないインスリン非依存性遺伝性糖尿病である。ごく最近、この中の少くとも一部はインスリン受容体遺伝子の異常によることが明らかになった。われわれは最近、世界に先がけて3種の尿素サイクル酵素およびインスリン受容体cDNAのクローニングに成功した。これらの成果を土台として以下の結果を得た。 (1)オルニチントランスカルバミラーゼcDNAおよび染色体遺伝子を単離し、これを用いて日本人における本遺伝子座の制限酵素切断長多型(RFLP)を見出しその頻度を調べた。本酵素欠損症の4家系に適用し、そのうち1家系はDNA診断が可能であることが分った。一方アルギニン血症の病因遺伝子であるアルギナーゼcDNAおよび染色体遺伝子を単離し構造を決定した。さらに同遺伝子座に2種のRFLPを見出した。 (2)インスリン受容体異常型糖尿病のDNA診断法の開発に向けて、すでに単離したcDNAをプローブにして制限酵素StuIによるRFLPを見出した。糖尿病患者56名を含む126名について検索したところ、糖尿病と本多型が連鎖している可能性もあり、さらに解析中である。
|