研究概要 |
HIVを感染したMT-4細胞のDNA合成(【^3H】-チミジン取込法)を調べると、その取込みが、ウイルスによる細胞変性を逆比例的に表現していることがわかった。また、それぞれの測定時間で【^3H】-チミジンの取込みは、ウイルス量に反比例しており、この方法がウイルスの定量として有効であることがわかった。ウイルス濃度【10^(-1.5)】で感染後4日目に【^3H】-チミジンをパルスする条件が、最も定量性があったので以後、これを用いた。【10^(-15)】倍に希釈されたウイルスを1:40,1:120,1:360などに希釈した被験血清と等量混和1.4℃で2時間反応させた。その後、あらかじめ60×【10^4】1mlの濃度のMT-4細胞を50μl/ウェルでマイクロプレートに接種しておき、50μl/ウェルのウイルス血清反応液を加えて感染させた。対照として、用いたウイルスと等量、およびその1/4,1/10の希釈ウイルスをMT-4に作用させた。ウイルスの定量直線から、又5%のウイルスを不活化する血清濃度を中和抗体価として表現した。多数の血清を用いて、中和抗体の測定を行った。その結果、正常人で蛍光抗体法による抗体が陰性の血清では、全例80倍以下を示した。そこで、80倍以下の中和抗体価を陰性とした。蛍光抗体法で陽性の血清33例はすべて中和抗体陽性で、その抗体価は、1:80から1:9000倍であった。蛍光抗体法による抗体価と中和抗体価の間には、明らかな相関があった。AIDSの症状と中和抗体価との関係を調べてみると、むしろ完全にAIDSに進行してしまった患者群ではその前駆症や健康人キャリアーに比べて、中和抗体が下がる傾向が観察された。免疫沈降法による解析から、中和抗体は、主としてウイルスのエンベロープ糖蛋白に対するものであろうと考えられた。現在、酵素抗体法(ELISA法)により、同様の方法が可能かどうかを検討中である。
|