研究概要 |
白血球局在性のアルカリフォスファターゼ(LAP)活性測定には従来よりβ-グリセロ燐酸を基質とする方法が用いられて来たが、同法は繁雑であるため、フニエル燐酸を基質とする血清LAP活性測定法の応用を試み、簡便な後者の方法の実用化に成功した。両法の測定値間には有意な相関性(r=0.860,P<0.01)が認められる。ついで既存の有機溶剤曝露装置によりラットを用いて、ベンゼンを含む各種溶剤と許容濃度前後の濃度で反復曝露実験を行った。8時間/日×7日間反復曝露を行った場合、ベンゼン20ppmあるいは50ppmの濃度ではLAP活性には有意な低下はおこらないが100ppmでは非曝露時の150%,300ppmでは同じく約200%の上昇(いづれも有意,P<0.01〜0.05)が認められた。1000ppmあるいは3000ppmでは3000ppmを上回るLAP活性上昇は認められなかった。20ppm以上の濃度では体重,末梢血白血球数共に減少した。その程度は高濃度ほど著しく、LAP活性の変化と対称的であった。次に溶剤曝露に伴うLAP活性の変化がベンゼンに特異的な変化であるか否かを検討するため、芳香環1個を有しベンゼンと化学構造が類似するトルエンおよびm-キシレン,6個の炭素原子を有するが直鎖構造のn-ヘキサン,分子量は比較的近似するが化学構造が異なり且つ塩化炭化水素・ケトン類・エステル類の代表であるトリクロロエチレン・メチルエチルケトン・酢酸エチルおよびアルコール類のメチルアルコールに対して、それぞれ300ppm×8時間/日×7日間の反復曝露を行い(平行して陽性対称は300ppmのベンゼンに曝露)、LAPの活性変化を観察したところ、ベンゼン群に有意なLAP活性変化が現れる条件下でもベンゼン以外の溶剤曝露群には有意な変化を認め得なかった。従って変化はベンゼンに特異的である。」
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