研究概要 |
本年度は基本的な諸問題に取組み、それらを解決するという目的を果したが、応用研究にまでは手が回らなかった。 ラテックス・マイクロタイター凝集反応の沈殿像の大きさから定量値を得るには、(1)形が崩れない沈殿像を再現性よく出現させ、(2)その沈殿像を機械的方法で正しく測定する。というふたつの段階が必要である。(1)は主としてラテックス素材の開発と粒子の被覆方法,さらに検査手技の改良に依存するが、本年度は血清中の抗DNP抗体,抗IgG抗体,抗サイログロブリン抗体などを定量するための試薬を作ることができた。本補助金の対象外の研究で開発された仮称HDシリーズラテックス粒子を用いた試薬は沈殿像が美しく、自動測定に適していることが分った。また、ラテックス粒子以外にも固定赤血球やゼラチン粒子を使用することが可能なような成績も集積されつつある。 (2)の段階については、画像処理装置をほぼ完成させることができた。私たちのシステムは大量製産品であるグラフィック・コンピュータなどの既製品を集めたもので、底価格で充分に目的を果すものであり、独自のコンピュータソフトもほぼ完成した。このシステムを用いれば、ひとつの凝集沈殿像を約20秒で計測してデータを記憶させることができた。 測定システムの作製と改良に日時がかかったため、応用的研究はできなかったが、沈殿像測定法の検出感度は、ヒト血清中の抗DNP自然抗体では、ELISAに匹敵し、測定所要時間はELISAの2日間に比し3時間といちぢるしく短かかった。また、赤血球凝集反応による抗A、抗B凝集素の測定ではホールグラス法に比べて16倍,肉眼判定によるマイクロタイター法に比べて4倍ほど鋭敏であった。
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