「緒言」 これまでの研究から後負荷血管系の機械特性は心拍出量の重要な決定因子であることはよく知られているが、動脈系に明らかに存在する脈波の反射が心拍出量に与える影響は殆ど知られてない。そこで摘出灌流心に任意の血管インピーダンスを負荷する装置を試作し、血管の反射波の存在がどの程度心拍出量や一回駆出量に影響を与えるか検討した。 「方法、結果」 初年次は(1)装置の設計に必要な血管インピーダンスを実験的に測定、(2)インピーダンス負荷を行う効率の良いアルゴリズムの研究、(3)心室の容積制御用のサーボポンプの高速化(インピーダンス負荷のためには不可欠)をおこなった。 急性開胸犬の体循環血管床を4端子網とみなし、動静脈の瞬時血圧血流より動脈および静脈インピーダンス(あるいはアドミッタンス)を算出した。さらにこれらの血管インピーダンスからインパルス応答を得た。動脈系のインピーダンスのインパルス応答は全体としては指数関数的に減少するが、0.5秒以内では複数の血管反射に基づく振動が明らかになった。 インパルス応答はおよそ3-4秒持続するので有限インパルス応答型(FIR)デシタルフィルターにすると2000点/2msecの高速畳み込み積分が必要となりハードウエアの限界を越え実現不可能となる。シュミレーション解析した結果、リカーシブ(IIR)フィルターにすると1/10以下の演算回数で同程度の精度を得ることが明らかになった。 すでにサーボポンプの高速化は完了しており2年次は実際のインピーダンス負荷を試みる。
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