研究概要 |
末梢リンパ球の染色体は放射線に高感受性であり、かつ染色体に生じた異常は明確な線量・効果関係を示す。今回は放射線治療における種々な放射線の線量分布について染色体分析により調べ、物理学的方法で得られたものと比較・検討することを目的とした。 染色体分析は末梢血をプラスチック製の細試験管に入れて、種々な放射線に、種々なる位置にて照射をし、PHAを加えて50時間培養後、標本を作製することにより行った。なお、1回目の分裂における染色体像を得るためにコルセミドは培養開始後26時間目に添加した。分析の対象とした染色体異常は二動原体染色体と環状染色体とした。 (1)14MeV,電子線(ベータートロン)による線量・効果関係は【^(60)Co】・γ線による結果とよく一致した。しかし、深部線量分布でみると物理学的方法によるものに比べ若干の差が認められた。また、造影剤を添加して照射すると放射線増感が認められた。この電子線照射実験の結果はBritish Journal of Radiology Vol.57,No.706,1001〜1005,1986に発表した。 (2)6MeV,中性子線(医科研・サイクロトロン)の照射による染色体異常生成の線量・効果関係は【^(60)Co】・γ線によるものに比較し、linearな成分が高く、またRBEも3以上結果が得られ、とくに低線量でのRBEの増加が認められた。深部線量の分布でみると、物理学的測定で得られた結果とほぼ一致した染色体異常生成率の分布が得られた。さらに、同一照射野内での分布をみると、器種に個有とみられる両側非対称の線量分布が得られた。この照射野内およびその辺縁における中性子線およびγ線の分布を別々に測定し、染色体異状頻度の分布と比較・検討中であり、62年度の日本医学放射線学会の生物部会で発表の予定である。なお、陽子線を用いての実験は62年2月から放医研にて実験を開始する予定である。
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