研究概要 |
本研究においてはI.Transcatheter Arterial Embolization(TAE)法の確立. II.Hyperthermotherapy法の確立. III.担癌動物への加温効果の検討. IIII.臨床応用を目的とする基礎的な技術方法の検討の4項目に従って, 主として切除不能肝癌の治療法の開発を目的に実験を行った. 項目Iでは, 癌栄養動脈及び門脈塞栓物質としてZeinを選択し, その効果について検討した. さらに金属粒子をZeinに混入したものや, 磁性流体を用いて塞栓状況をX線や組織学的に検索した. これらの結果については, 既に一部学会において報告したが, 主要栄養血管の永久的塞栓が抗腫瘍効果を一層向上すると考える. Hyperthermotherapy法の確立では, 温熱療法において最も危険性の少ないと考えられる体外からの局所加温法の開発と手技の確立を目的とした. まずマイクロ波(2450MHz)照射用アンテナの一部変更と, RF波を用いるものは新しく作製した加温装置で磁場加温(誘導加温)用の最大出力500w, 出力周波数500KHz(型名C57-2301)で内径の異なる一つの加温用コイルを備えている. また市販のノバサーム 1H-500L(RF誘電加温装置 13,56MHz,1000w)と接続して磁場加温を行なう2〜4回巻きコイルも作製した. 項目IIIでは, in vitroでの培養株化に成功したVX_2-A細胞を用いて, 家兎肝に固型腫瘍を作製しえた. この担癌家兎に, 先に述べた塞栓物質の注入による永久的塞栓術と加温療法を試みた. 以上のI〜IIIまでの成績を統括すると, 非切除肝癌治療の一つの方法として, 経開腹的な腫瘍栄養血管へのカニュレーションと結紮, 切離および同血管への磁性流体による永久的塞栓を施行. その後直ちに開創(術中)照射加温を行なって閉腹. 腫瘍形態の変化はX線像より経時的に観察する. さらに術後の温熱療法は体外的加温により, すでに塞栓物質として注入されている磁性流体の発熱作用を応用して無侵襲に行なえるものと考えられる.
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