研究概要 |
研究計画に示した各項目に関して, 以下の研究成果が得られた. 1初年度では, 高制御性・超小型渦巻式血液ポンプを含む新しい補助循環システムを開発した. (1)ポンプヘッドの血液充填量は市販遠心式血液ポンプの1/5〜1/10に低減され, 乳幼児への適用が可能となった. (2)羽根車駆動方式をモータ直動型とすることにより流量応答性の向上及び簡易構造化が実現された. (3)in vitroの総合的性能試験により本血液ポンプの最適羽根形状(セミオープン型, 羽根入口・出口角度:20°,50°)が決定され, さらにケーシング形状と最適使用流量域との関係が明らかとなった. (4)心拍同期及び非同期の拍動流駆動が可能な駆動制御装置を開発し, 毎分200回程度までの拍動流が発生可能であることを確認した. (5)動物実験の結果, 本システムにより心仕事量を有意に長期間安定して低減可能で, 拍動流ポンプシステムとしても充分適用可能であることが実証された. 2次年度では, 前年度で開発した補助循環システムを10〜24時間のイヌ左心バイパス実験に適用し, 補助循環による血行力学的負荷軽減に対する心臓適応反応を, 減負荷急性期における核酸代謝の面から検討した. その結果, (1)補助率(左心室内圧ピーク値の減少率)を50%以上とした場合, 10時間程度のバイパスにより左室心筋細胞核RNAポリメラーゼ活性が低下すること, (2)補助率が20〜50%の場合は活性低下が軽微であることなどが明らかとなった. 従って, 心臓補助循環の施行に際し, 圧負荷を有意に低減した場合(即ち高補助率とした場合)比較的短時間でRNAポリメラーゼ活性が減少し, 心室壁厚減少の方向に反応が進行することが示唆された. 以上, 本研究は61, 62年度の2ケ年にわたる研究実施計画に対して十分満足すべき研究成果を得たと同時に, 本研究を通して新たな重要な研究課題も提起され, 今後さらに研究を発展させる見通しも得られたといえる.
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