研究概要 |
免疫組織化学的研究法は, 組織や細胞における特異の物質の分布や動態を形態との関連で追求するには極めて有効な手段があり, 形態学の分野では今後さらにその動要性が増すことが予想される. この方法においては組織や細胞の形態を損うことなく, 目的とする物質の抗原性を保存しなければならない. 光顕レベルの免疫組織化学においては, この2つの要求を同時に満足させることはさ程困難ではない. しかし, 高度な超微形態の保存状態が要求される電顕レベルの免疫組織化学においては2つの要求を両立させることは極めて困難である. 本研究では同一試料を種々の抗体で免疫染色できるなど種々の利点をもつpost exbedding法による電顕免疫組織化学的方法において, 組織固定法, 包埋法などを改良して, 超微形態と共に抗原性の保存にも優れた方法を追求したものであり, 以下の結果を得た. 1)固定法について:2〜0.1% glutaral dehyde(GA)と2〜4%paratormaldehyde(PA)を添加した0.1Mカコジール酸緩術液又はPLP固定液による前固定について検討した. なお後固定ははいずれも, 1%オスミック酸を用いた. 超微形態と抗原性の保存には0.1%GAと2%PAによる前固定が最適であった. 2)包埋剤について:いずれもエポキシレジン系樹脂であるエポン812とアラルダイトについて比較検討した. 超微形態の保存ではエポンの方がわずかに優れているが, 抗原性の保存ではアラルダイトの方がはるかに優れている. 3)超薄切片の前処理法について:還元オスミック酸を除去し包埋剤を部分的に除去して抗原を露出させるために, 抗体による免疫染色に先立って超薄切片を種々の薬品で処理したが, 10%加酸化水素が最も有効であった. 即ち, 0.1%GA,2%PAと1%オスミック酸によって固定してアラルダイトに包埋した試料について免疫染色を行ない, 少なくともI型及びII型コラーゲンではほぼ満足すべき結果を得た.
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