研究概要 |
1.分化誘導因子(DIF)及びコロニー形成因子(CSF)の高純度精製:ConAで刺激したマウスの脾細胞の培養上清よりDEAE Cellulose,Blue Sepharose CL-6BSephadex G50の各種カラム及びHPLCを用い、DIFとCSFの高純精製に成功した。これらの因子の骨代射調節作用の検討は62年度の課題であるが、精製DIFとCSFの骨吸収作用をRaiszの実験系を用いて検討したところ、DIFは強力な骨吸収活性を有していることが判明した。また、CSFは単独では骨吸収活性を示さなかったが、DIFと共存させるとDIFの骨吸収活性を更に高めた。以上の知見は、骨髄細胞の増殖と分化が骨吸収作用と密接に関与していること、並びに従来Osteoclast Activating Factor(OAF)といわれてきたTcell由来の骨吸収因子の一つがDIFであることが示唆された。 2.破骨細胞形成過程の培養系の確立:マウスの肺胞マクロファージを用い、多核巨細胞の形成を調べる培養系を確立した。この系において、活性型ビタミン【D_3】[1α,25【(OH)_2】【D_3】は多核細胞の形成を著しく促進した。ビタミンA酸を用いた実験から、マクロファージの融合の前段階として、マクロファージの活性化が必須であることが示された。骨吸収を抑制するIFN-rは、1α,25【(OH)_2】【D_3】と共存すると、1α25【(OH)_2】【D_3】による多核細胞形成を著しく抑制した。また、マウスの骨髄細胞を培養し、破骨細胞様の多核細胞の形成を調べる系も確立した。この系において、1α,25【(OH)_2】【D_3】や副甲状腺ホルモン(PTH)は多核細胞の形成を促進し、カルシトニンはその形成を抑制した。 3.破骨細胞と骨芽細胞の共存培養系の確立:この系の確立はまだなされていないが、株化された骨芽細胞(MC3T3-E1)の培養上清にDIFとCSFが存在することを明らかにした。部分精製した両因子を含む画分に骨吸収活性があることを認めた。この知見は、破骨細胞の活性化あるいは形成に骨芽細胞が関与していることを示唆している。
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